ウィルソン、コリン 中村保男訳
現代の魔術師――クローリー伝
河出書房新社 1988


(2) コメント

 少し古いが、以前読む必要なしと捨て置いたのを、最近古書店で購入したので紹介する。十年以上経ったので知らない人がいるかもしれない。古本屋ではこの本は時々見かけます。

 本書はコリン・ウィルソンによるクロウリーの伝記である。
 ウィルソンは著名であるが、私はそれ程詳しくないので、解説はしない方がよいだろう。クロウリーについても同様である。
 さて、本書は黄金の夜明けに関する記述は少ない。また、彼の魔術思想や技術についての記述も少ない。しかし、クロウリーについて知るためには、読みやすくそれなりに面白いし、何よりも中立的立場から記述しようとの作者の意欲がうかがえる(もちろん作者の判断・解釈が多く反映しているが)、よい本である。

 クロウリーはその人物と思想の評価の仕方、好悪は別として一応はこの分野での「著名人」なので、最低限のチェックがクローリアン以外の者にも教養として必要である。
 なお、本書では書名・人名表記等が、多少、国書のシリーズものと違う点も注意する必要がある。また、引用箇所での出典の記述や参考文献表や索引を欠く点は読み物としてはともかく研究には使いでが悪い。

 ところで本書を読んでのクロウリーについて感じたことを、事例を引いて述べようかと思ったが、述べない事にする。きついことを言って敵を作りそうだからである。私は基本的立場として、主張者の行動に現われる人格への評価と、特に思想といった主観的側面への評価は密接に関連させるべきだと「信じています」(笑)

 結論のみを言うと、私は彼の人格を、そしてそれゆえに彼の作品・思想を高く評価できません。私は、率直に言ってクロウリーに嵌る人、彼の思想等を高く評価する人の心理を、理解する事も納得する事もできない。
 まあ加齢によって変わるかもしれませんし、クロウリーを研究していない(その気も今のところ余り起こらない)ので、「今」の「私には」「理解・納得」できないことを知っていることで十分だと思っています。(だからクロウリーが好きな人怒らないでね(^_^;))

(3) 目次

 謝辞 3
I 魔術に霊験はあるか 7
II 不本意ながらのキリスト教徒 33
III 大騒動 69
IV 神々に選ばれし者 94
V 達人と導師 128
VI 魔術杖 157
VII 欲するがままになせ 182
VIII 楽園喪失 211
 エピローグ 241

 訳者あとがき 267
以上
(初出:02/07/29,No.0125 )

Note

 例えば、
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作成者: TRK
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