マン,A.T. 矢羽野薫訳
タロット 未来を告げる聖なるカード
河出書房新社、1996


(2) コメント

 河出書房新社の聖なる知恵入門シリーズの一冊。同シリーズ中に本書が入っているのは長らく承知していたが、以前立ち読みをした時食指を誘われなかった。しかし、平成一三年の九月ごろ、ある方にタロットについて深く言及している数少ない邦語の文献であると、お勧め頂いたので、本屋で見つけて購入した。その際、同シリーズのギルバート『神秘学』も購入した。

 著者は建設並びにグラフィック関係の仕事に従事しながら、プロの占星術師、タロット占い師として活動し幾つもの著作を発表している。私も他の本の文献表でマンの名前を二回ほど見たことがある。それ以上の詳しいプロフィールは残念ながら不明である。

 内容は、ウェイトのライダー版を大アルカナを中心に解説している。
 しかし、本書の最大の特徴はタロット・カードの訓練の発展性、可能性を意識した内容になっていることだ。
 例えばカードの解説もどの様に訓練していくか、訓練方法を意識した説明の分類に従って記述している。スプレッドの方法についてもスプレッドの基礎となる原則を重視して論述している。

 本書はなるほど150ページ余りと大部の書ではない。また、カード一枚一枚の解説についてもニコルズの『ユングとタロット』には遠く及ばない。しかし、タロットのとらえ方について多くの示唆を含んだ良書であり、邦語で読める最良の一冊である。値段・分量も手ごろであるので一読を薦める。

 ただ、魔術研究者として見た場合、本書の難点は黄金の夜明けのタロット理論に関連して記述が多少誤解があるように思われる点である。(別に最初に外部に公開した一人はウェイトだが、彼がGD理論を完成させたわけではないと思うのだが?)
 また、参考文献にリガルディーの『全書』は挙がっていないのも私達には少し寂しいことは否定できない。

(3) 目次

 はしがき 4
 1 タロットとは? 6
 2 タロットの起源と歴史 9
 3 タロットの構造とシンボリズム 17
 4 二二枚の大アルカナ・カード 30
 5 小アルカナ 76
 6 タロットのリーディング 108
 7 タロットのスプレッド 117
 8 タロットと自己開発 144
 9 タロットをもっと理解するために 150
 用語解説 152
 参考文献 157
以上
(初出:02/02/14,No.973 )


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作成者: TRK
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