ショーレム,ゲルショム 徳永恂ほか訳
錬金術とカバラ
作品社,2001


(2)コメント

 故ショーレム博士(1987-1982)の論集「ユダイカ」4巻目の翻訳(ユダイカは2000年六月時点で六巻まで既刊)。2001年9月10日印刷、同15日発行と書いてあるバリバリの(死語?)「新刊」(2001.9.12記)です。邦訳は3まで、がかなり前に河出書房から出版されている。

 邦題となった「錬金術とカバラ」にはウエストコットが訳した『浄化する炎』に触れる点もあり黄金の夜明け魔術に関係するものの琴線に触れる。しかし、訳者があとがきで触れるように「ショーレムが主張しているのは、むしろカバラと錬金術の間には原則として関係はない、ということ」(p.289)だから、魔術の歴史や錬金術の歴史に、現実を無視した幻想を抱きたがる人には面白くない本かもしれない。
 「錬金術とカバラ」以外にも「ヨーロッパ精神史におけるカバラの地位」は簡単なクリスチャン・カバラ史を簡明に解説していて参考になる。

 また、クロウリーにも少し触れているが「アレイスター・クロウリーやその賛美者のようなペテン師たちが」(p.21)などあまり芳しくない評価なのは熱心なクロウリヤンの方は意義を申し立てるかもしれない。しかし、「錬金術とカバラ」の執筆年代は不明だが、博士は1982年にお亡くなりになった点をお忘れなく。執筆当時のクロウリー賛美者への批判としては妥当かは皆さんのご意見を是非ともお聞きしたいものです(^_^;)

 最後に、この本は魔術の学習者には、必ずしも必要な本ではありません。しかし、他のユダイカの翻訳本同様古本屋で程々の値段で売っていたら購入するか、書店・図書館で見つけたら手にとって読んでみるのがよいでしょう。

(3)目次

ヨーロッパ精神史におけるカバラの地位 5
錬金術とカバラ 20
宗教現象としてのニヒリズム 144
ユダヤ教の宗教的カテゴリーとしての啓示と伝承 195
一九〇〇年から一九三〇年の間のドイツにおけるユダヤ人の社会心理について 229
ユダヤ的敬虔の三つのタイプ 261
訳者あとがき 286
(初出:01/09/12,No.665 )
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作成者: TRK
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