ニコルズ,サリー著
秋山さと子、若山隆良訳
ユングとタロット 元型の旅
新思索社、2001


(2)コメント

 私がこと本を知ったのは、IOSのBBSで鏡氏が2001,4,7に

 ところで長らく待たれていた「ユングとタロット」が
 ついに邦訳されました。僕も帯に推薦文を書いていますが
 タロットをユング心理学をもとに解釈した優れた本です。
 GD式の解釈とは少し趣がことなりますが
 おすすめです。よかったらぜひ。
と投稿された事が契機であった。
 その後、同BBSで秋端氏が「なかなかの<奇書>」と述べ、さらに鏡氏が
 「奇書」の醍醐味、味わってみてください。
 迷宮のようにイマジネーションを翻弄されますよ。
と述べていたので私も購入した。

 著者サリー・ニコルズ(Sallie Nichols1908-82)はユング派の分析心理学者あるいは分析家である。アメリカ国内のユング研究所でタロットに関する講義行っている。また、ハリウッドの神智学センターでは「タロットによるユング心理学への旅」との連続セミナーを持っていた。著者はまたタロットを用いた心理面接(「タロット・コンサルテーション」)の実践を、タロットとユング心理学の研究と平行して行った。

 本書でニコルズはタロットを、個人的な連想のみならず神話や宗教文学など関係するあらゆるイメージと関連付けて「拡充」(amplification)を実践している。
 解釈はGDとは少なからず異なるし、必ずしも著者の解釈に従う必要はない。しかし、タロットとどのように付き合うかの一つのモデルとしてタロット学習者にはおおいに参考になる。

 なお、ニコルズはマルセイユ版タロットを使用して解釈を膨らませている。その理由はマルセイユ版のみが著者が不明であり、また特定の解説書とセットでないからだとしている。換言すれば、特定の著者や思想に拘束されず、今あるカード「それだけが」術者と無意識に直接話し掛けるからだ。
 わが国では近時本当のタロット、或いは歴史的に正しいタロットの復元としてカモワン版マルセイユ・タロットが大沼氏らにより提唱されている。しかし、ニコルズに言わせれば歴史的に消えてきた象徴や色さえも人の集合的無意識がダイナミックに自らを表現した結果なのだろう。復元はまた歴史によって新しく付与されていた象徴が失われる。タロットの作成について常に存在する難しい、答えの出ない問題である。

(3)目次

はじめに ローレンス・ヴァン・デル・ポスト 3
第1章 タロット入門 15
第2章 旅の地図 26
第3章 愚者 タロットの中とわたしたちの中の愚者 50
第4章 魔術師 創造者にしてトリックスター 82
第5章 女教皇 タロットの女大司祭 124
第6章 女帝 聖母、大母、天と地の女王 148
第7章 皇帝 文明の父 169
第8章 教皇 目に見える神の顔 196
第9章 恋人 キューピッドの黄金の過ちの犠牲者 211
第10章 戦車 それは私をつれもどす 229
第11章 正義 誰かそこにいるのか? 250
第12章 隠者 そこに誰かいるのか? 267
第13章 運命の輪 助けを! 290
第14章 力 誰のもの? 326
第15章 吊るし人 宙ぶらりん 347
第16章 死 敵 366
第17章 節制 天の錬金術師 399
第18章 悪魔 暗闇の天使 419
第19章 破壊の塔 解放の一撃 453
第20章 星 希望の光線 472
第21章 月 処女か威嚇か?
第22章 太陽 輝ける中心
第23章 審判 召命 538
第24章 世界 永続性の窓 556
第25章 カードの展開の方法について 586
文献 624
索引 636
用語解説 643
謝辞 645
訳者あとがき 646
著者紹介 652
(初出:02/03/08,No.1014 )
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作成者: TRK
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