ポンセ、チャールズ 大沼忠弘訳
魔法遊戯 シンボルの宇宙図
平河出版社、1983


(2)コメント

 本書はCharles Ponce de LeonのThe Game of Wizards, Penguin Books, 1975の翻訳書である。ポンセの訳書としては他にカバラがあり、既に紹介した。
 六章まで読み、気付くのは魔法遊戯との邦題が甚だ失当である点であろうか。著者の語っている内容はWizardsの遊び、即ち主体としてのWizardsが不可欠であるからである。また、ゲームが定冠詞と単数形で、ウィザードは複数形な点を深読みするとあるメッセージが読み取れて大変興味深い。

 著者は占星術、易、カバラ、タロット、錬金術の体系をテンポよく、鋭い視点から分析しながら全体像を俯瞰し、それを通して(著者はタロットについては今後の課題として例外とするが)オカルト科学に一貫する原理を示そうとしている。即ち、統一場、二極性の概念、力の三位一体的表出、宇宙の四構成である。

 そしてポンセは、それらを知る方法は6章でアインシュタインを例としてあげて「創造的天才にとってなくてはならぬ鍵」である「想像力」、そして「想像力のもう一つの重要な要素」である「遊び」である、と主張する。さらにポンセは続けてアインシュタインを借りて「想像力とは、通常の実験ではとうてい解明できない、事物の本質を一挙に開示する力をもったもの」、「『生産的思考の本質的特徴』とは、『遊び』によって、論理的思考を中断させることである」と主張する。  しかし同時に、この「遊び」とは「一種の演繹的な知的作業であって、平均的人間ならば『遊び』どころではない、つらい仕事以外の何物でもないであろう」と述べる。

 即ち、私たちの学ぶ「オカルト科学」は、かかる「遊び」の産物いやそれを生み出す場であり、私たちはそこで「遊ぶ」Wizardsなのである。  平均的な人間である私たちにとってはつらい「遊び」の側面もあるが、その先には安らかなる叡智が存在することを望む。

 最後に、お読みでない方は、機会があれば読むように強くおすすめします。
 視点が斬新であるし、錬金術の解説なども短く分かりやすい。ただし、全くの初心者よりある程度基礎知識を有している人の方がポンセの視点に多いに刺激されスリリングな読書を楽しめるでしょう。読後の感想としては、もっと早く読んでおくべきだったと悔やみました。

(3)目次


序文 6
第一章 占星学の夢 11
第二章 偶然の世界 73
第三章 「神」の構造 115
第四章 形而上学の坩堝 155
第五章 化学的幻想 177
第六章 未来は精神にあり 219
付論 239
原注 266
訳者あとがき 278
以上
(初出:02/02/26,No.999)


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作成者: TRK
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