【注意】TRK名義のこの記事は古い記事です。現在の筆者の知見とかなり異なります。また、情報も執筆当時のものであり、古い。若干のコメントを【】で加筆した(2016年5月26日)

小五芒星儀式小考 実践と応用の為に

目次

1 序
2 歴史
3 意義
4 儀式
 4―1 形式
 4―2 心象風景
5 儀式の楽しみ方
6 結語
  
  参考文献表

1 序

  「黄金の夜明け」団の魔術において、もっとも特徴的な要素は何であろうか。
  ある人はエノク語の利用を挙げるだろう。また、ある人は生命の木を中心とする魔術の体系化を挙げるだろう。
  しかし、私は五芒星儀式を「黄金の夜明け」団の魔術におけるもっとも特徴的な要素であると考える。
  なぜなら、「黄金の夜明け」団において、五芒星儀式が多くの儀式において必須の構成要素として常に存在する。また、同時に多くの儀式の骨格を形成しているからである。

  私の考えに対して、参入儀式群を例に、もっとも特徴的な要素は五芒星儀式ではない、との反論があるだろう。
  確かに、参入儀式において生命の木の象徴体系が大胆に採用されている。また、参入儀式が「黄金の夜明け」団を特徴付ける重要な儀式であることは否定できない。
  しかし、参入儀式は日常的に実践される儀式ではない。参入儀式は、あくまでも儀式の中でも特別の形式を有しており、一般的なものではないと考えるべきである(注1)
  また、ある人は五芒星儀式というならば、六芒星儀式はどうだ、というかもしれない。確かに、六芒星儀式も「黄金の夜明け」団の魔術を特徴付けるものであることは否定できない。
  しかし、『黄金の夜明け全書』を見る限り「黄金の夜明け」団の魔術に対する影響力は五芒星儀式と比較して弱いと思われる。
  その一方、五芒星儀式は小五芒星儀式が「黄金の夜明け」団において参入者にもっとも最初に教授される儀式であり日常的に用いられたことが想像される。また、大儀式はエノク語魔術(注2)の最初の手引きであると同時に四大に関係するあらゆる儀式についての骨格を提供している。これらの点を考えると「黄金の夜明け」団の魔術全体におけるもっとも特徴的な要素は五芒星儀式であると考えるべきではないであろうか。
  尚、五芒星儀式が儀式の骨格を形成している具体例としては、生まれなき者の大儀式、物見の塔の開式が挙げられる。
  そして、現代において最も世界中で実践されている西洋魔術の儀式は小五芒星儀式退去式である事に多くの人が同意するであろう。

  そこで、本小考では「黄金の夜明け」団を特徴付ける五芒星儀式の中から特に小五芒星儀式に焦点を当て儀式の実践と応用のため必要と思われる基礎的情報を提示し、また、参考例を通して応用の方法を示したい。

2 歴史

 2−1

  我々は、「黄金の夜明け」を語る場合、第一にイスラエル・リガルディー(以下IR)の視点を通すことになる。IRはその著書黄金の暁会 最後の覚書において、五芒星儀式の起源について、「<五芒星形の儀礼>…の起源を求めて、大英博物館のスローン文書やハーレイアン文書を何ヶ月も捜し回った」(p.107)が起源を発見できなかったとの趣旨の発言がある。仮にその言を信頼した場合、五芒星儀式(恐らくIRは大儀礼を念頭においていると思うが)は「黄金の夜明け」団のオリジナル儀式といえる。
  では、小五芒星儀式はどのような起源や背景の下に存在するのだろうか。
  その起源を簡単に検討するのがより効率よく小五芒星儀式を実践し応用する前提になると私は考える。

 2−2 暗号文書

  「黄金の夜明け」の五芒星は頂点の角に精霊を配属し、他の四角に四大を配属している。そして、五芒星の切り方は召喚が各配属角に侵入しする。他方、退去では各配属角から出発する。また、精霊は火・風に対応する能動の五芒星と地・水に対応する受動の五芒星が定められている。
  これらの配置と切り方は暗号文書に存在し、大儀礼は暗号文書までは由来を追求できる。しかし、小五芒星儀式については私の見た限り暗号文書には指摘は無い。
  では小五芒星儀式の由来は如何。

 2−3 起源

  歴史的起源に関しては、一般的にエリファス・レヴィの五芒星儀礼を起源としているとするのが定説とされる。
  しかし、小五芒星儀式は実践上は退去式の利用頻度が著しく高い。そして、退去式は多くメインとなる儀式の前にその場を浄化し場を整えるために行われる。他方、中世奥義書では魔法円が儀式場の浄化の役割を果たしている。
 私は両者役割の同一性から小五芒星の退去式を魔法円の一類型に位置付け、またその起源を魔法円に負っていると考えるのが実践上、妥当であると考える。
  また、小五芒星儀式での視覚化は中世奥義書の魔法円を彷彿させるものである。この点も私の視点を補強する。尚、神名の配置についてはヘプタメロンの図版に類似したものが見受けられる。
  さらに、秋端氏により「RCトンプソンのバビロニアの悪魔と悪霊(ロンドン1903年)によると五芒星儀礼の原型とも読みとれる魔術儀式が記述されている。」とのカルディア起源説の指摘もある(IOSのHP所収「五芒星の儀式」より)。【トンプソンは著作権が切れ、ネットに放流されている。しかし、「パッと見」では該当箇所を発見できなかった。このトンプソン起源説は、キケロも自ら補訂したIR『中央の柱』の中で触れている。しかし、両氏ともにビル・ヘイドリックの論文を引用したものである。ヘイドリックの論文については残念ながら参照することができなかった】

3 意義

  では、小五芒星儀式が現代に強い影響を与えているのは、小五芒星儀式にどのような意義があるからであろうか。
  思うに儀式の簡略化と簡明化にその意義を認めるべきである。
  この点、GD団以前の著名な魔術書(マグスソロモンヘプタメロン,または哲学者ピテル・デ・アバノの魔術のエレメンス等)を見ると概ね魔法円は地面に三重円を書き、その円の帯に神名・日時の天使・精霊・惑星霊の名前とシジルを書くまた円の内部をを四つに分割し(十字を書く)たり、六芒星を書いたり各所に五芒星を書いたりすることにより設置される。この様な魔法円の設定は日常的に設置することが困難であることは明白であり日常的に魔術を行うのを事実上不可能にしている。
  小五芒星の退去式はこの様な煩雑な魔法円の設置を簡略化し魔術儀式を日常的に行えるようにしたことに意義を見出せると私は考える。
  これは私の想像であるが、現代のGD団以後の実践的魔術師はほぼ毎日何らかの魔術儀式を行っている。しかし、過去の魔術師または魔術を行う人たちはなにか特別の目的のある特別な場合(例えば呪殺や特定の天使や悪魔の召喚喚起など)のみ魔術を行っていたのではないかと想像される。
  換言すれば、私は今のような魔術のライフスタイルを形成したのは小五芒星儀式であると考える。

4 儀式

 4−1 形式

  4−1−1 基本的骨組

  小五芒星儀式の基本的骨組は大別して以下の四つに分けるのが通例である。


   A カバラ十字
   B 五芒星の刻印と神名振動
   C 大天使の召喚
   D カバラ十字 (Aと同じ)


  イスラエル・フランシス・リガルディー(IR)の黄金の夜明け魔術全書(以下全書)では小五芒星儀式の式文といて以下の式文を紹介している。

A  :ATEH MALKUTH VE-GEBURAH VE-GEDULAH LE-OLAM AMEN
B  :YOD HE VAU HE
   ADONAI
   EHEIEH
   AGLA
C1 :BEFORE ME RAPHAEL(我が前にラファエル)
   BEHIND ME GABRIEL(我が後ろにガブリエル)
   AT MY RIGHT HAND MICHAEL(我が右手にミカエル)
   AT MY LEFT HAND AURIEL(我が左手にアウリエル)
C2 :BEFORE ME FLAMES THE PENTAGRAM-(我が前に五芒星は燃え上がり)
   BEHIND ME SHINES THE SIX-RAYED STAR(我が後ろに六芒星が輝く)
   IR(1989)pp.53f., 訳文:江口(1993) p.64

  4−1−2 IRによる文言の差異

  しかし、この全書の文言にも問題が指摘されている。すなわち、全書のGD文書はGDの後継団体SM(暁の星)内の文書であるが、C2部分の文言が変更された可能性があるのである。
  IOSの秋端氏はその著書実践魔術講座(以下講座)(p.117)で古い資料の記述として以下の文言を紹介している。

 For about me flames the pentagram, 
 and in the column stands the Six-rayed Star.
(我が周りに五芒星は燃え上がり、柱のうえに六芒星が立つ)
  また、アレイスター・クロウリーの魔術 理論と実践(下)(p.210)、SM接触前のIRのThe Tree of Life(p.166)では後者の文言を採用している。
  このことから少なくともクロウリーがGDに参入した当時(1898年)は後者の文言が採用されていたと思われる。
  また、五芒星儀式の実践において魔法円の封印の意味から後者が視覚化の面からも妥当と思われる。更に、現代ではより実践に適するとして'stands'を'shines'に換えて用いる例も多い。

  4−1−3 変化(肉付け)

  小五芒星儀式は非常にシンプルなので,各実践者により自らの好みで肉付けが行われている。
  一例としてコンウェイによるラテン語を用いた方法を紹介する(コンウェィp.68f)。もちろん、実践において訳文を用いるのも可能である。

  Cにおいて以下の文句を追加する。
  即ち、大天使の召喚に先立ち、

 Huc per inane advoco angelos sanctos terrarum aerisque, marisque et liquidi simul ignis qui me custodiant foveant protegant et defendant in hoc circulo.
(虚空より、陸海空の透明なる天使たちをここへ呼ばわん。この円陣にてわれを保護し、暖め、守り、防御したる火を灯し次第)を唱える。
  次に召喚し視覚化した大天使に向かい以下のように語りかける。
 Slave Raphael cuius spiritus est aura e montibus orta et vestis aurata sicut solis lumina.
(幸いなれ、ラファエルよ。その御霊は山より立ち昇る微風にして黄金色の衣は輝ける太陽の如し)
Slave Gabriel cuius nomine tremunt nymphae subter undas ludentes.
(幸いなれ、ガブリエルよ。その御名は波の下にて戯れる水の精も震わさん)
Slave Michael, quanto splendidior quam ignes sempiterni est tua majestas.
(幸いなれ、ミカエルよ。永遠の火より輝かしきは汝の威厳)
Slave Uriel, nam tellus et omnia viva regno tuo pergaudent.
(幸いなれ、ウリエルよ。なんとなれば、大地の全ての生き物、汝の支配をいと喜びたるが故)
  最後にまとめとして、以下のように唱える。
Non accedet ad me malum cuiuscemodin quoniam angeli sancti custodiunt me ubicumeque sum.
(ありとあらゆる災い、我に近付かざるべし。我いずこにおれど、聖なる天使に守護されたればなり)
  この文言が五芒星儀式における大天使の四大への対応、五芒星儀式の目的に注意を払っている点を参考にするべきである。

  4−1−4 簡略化

  また、逆にさらに小五芒星退去儀式の祓えと防御のエッセンスだけを抽出して、より簡略化することも行われている。これらは既に五芒星儀式と言えないかもしれないがその具体例を書籍から取材する。
 (1) 秋端氏はホルスの槍号外Vol. 3-2(p.8)において、四大天使の守護として五芒星を用いない。ヘブライ語の発音をつけて以下の方法を紹介している。

アドナイ・エロヒムの御名において、我が前にラファエル、我が後ろにガブリエル、我が右手にミカエル、我が後ろにウリエル、我が頭上に、神の雲が臨在せり。
 (2) また、ダイアン・フォーチュンは心霊的自己防衛p.188以下にB部分を省略したものを紹介している。
 (3) それに加え、魔法修行(p.43)でバトラーが紹介する「作業場の準備」、さらにグレイのコズミック・サークル・クロス(カバラ魔術の実践)も広い意味で魔法円を簡略化したものであり、小五芒星儀式の変形の一つといえる。
  ちなみに、DF以下はともにIL(内光協会)に所属していた。

  4−1−5 他の方法

  また小五芒星儀式は優れて簡略簡明であることから、他の神格や神話にも適用したものが多数ある。何種か例を挙げる。

(1) エノク語の術式

  シューラーは高等エノク魔術実践教本(p.102f)の中で小五芒星儀式を応用したとして以下の儀式を紹介している。もっともこの儀式においては四方に地の五芒星を用いるのではなく各方位ごとに四大の五芒星を使い分けている点で大儀式に近い。他方、大儀式に比べ儀式自体は単純化され小五芒星の構成になっている。

A :ZAH ONDOH MIH BUZD PAID
B :EXARP
  BITOM
  HKOMA
  NANTA
C :我が前にIKZHIKAL
  我が後ろにEDLPRNAA
  我が右にBATAIVAH
  我が左にRAAGIOSL
  見よ、4つの燃え盛る五芒星と我のみ霧の中にあり(註1)

(2) IOSの竜の術式

  以下に紹介する竜の術式の式文はIOSのオリジナル儀式である。神格はエジプト神格を用いている。

A :《竜の十字》(クルクス・ドラコニス)
 ABRA KADBRAThLI VBRCh VOQLQLVN OL BLIMH
B :HRV―RA―HA
  APV―PRSh
  ASTh―RNNVTh
  ASR―VN―NPR
C :我が前に、HRV―MAKHIS
  我が後ろに、HRV―AMOVN
  我が右手に、HRV―MHNTV
  我が左手に、HRV―KHONSV
  A―H―A
  我がうちに、静寂と力の星たる五芒の線が燃え、
  柱のなかに、真夜中の太陽たる六芒の光が輝く
D :再び、《竜の十字》を切る。

(3) IOSのラテン語式文

A :Tu es Regnum et Potentia et Gloria in Saecula Saeculorum, Amen
B :Ex oriente lucem orbis
  Ad Majorem Dei Gloriam
  In Hoc Signo Vinces
  Omnia Cum Sancto Sanctorum
C :Prae Raphael,
   Pone Gabriel,
   ad pares Michael,
   a sinistra Auriel
   Accendat Pentagram circum,
   spredere Hexagram in columna
D :Tu es Regnum et Potentia et Gloria in Saecula Saeculorum, Amen

(4) SOL日出の儀式(ホルスの槍vol.1 No.5, p.38 )

  この儀式は文字通り日出の儀式であるがBの部分で地の召喚五芒星を四囲に刻印し小五芒星儀式を応用している。神格はエジプト神格を用いている。

B :ホルス、太陽の太陽の名によって、我東を開かん。
  鷹の頭持てる神よ。我が儀式の証し人として、力持ち立ち給へ。
  ハトホルの名によって、我南を開かん。
  人の感情を支配せる女神よ。我が儀式の証し人として、力持ち立ち給へ。
  イシスの名によって、我西を開かん。
  万物の偉大なる母神よ。我が儀式の証し人として、力持ち立ち給へ。
  オシリスの名によって、我北を開かん。
  闇へ降り、陽の下へ再び戻りし君よ。我が儀式の証し人として、力持ち立ち給へ。
 以下省略。

(5) 四縦五横呪(藤巻pp.303f)

  最後に小五芒星儀式ではないが、類似する儀式として日本の陰陽道の呪文を紹介する。アイディアはいたる所にあるのに気付かれると思う。若杉家文書の「属星祭文(しょくしょうさいもん)」の身固式の一部である。

天を我が父と為し、地を我が母と為す、六合中に南斗・北斗・三台・玉女在り、左には青龍、右には白虎、前には朱雀、後ろには玄武、前後扶翼す、急急如律令
  但し、東面ではなく、北より南に向くのが中国伝来の哲学である点に注意を要する。長安や平安京の見取り図を思い出して欲しい。

 4−2 心象風景

  4−2−1 基本的考え方

  西洋魔術の実践において今日、心象風景の形成・視覚化が重要であることに異論はない。また、視覚化の重要性は密教の儀軌などを見ても確認できる。現に密教の儀軌などは現代の我々から見ても非常に細かい観法が定められており、公的に擁護されて継続発展した体系としての優秀性を西洋魔術と比較して認めることが出来る。

  では、小五芒星儀式においてどのような視覚化が必要であろうか。
  まず、前提として私達は小五芒星儀式が中世の魔法円を背景に作られたとを考える。
  そうすると、円の視覚化が重要であることに疑いはない。また、五芒星の刻印・神名、大天使像、六芒星の視覚化が小五星芒儀式を構成するものでありポイントであると考える。
  これらのポイントの中で私は大天使像が一番裁量の幅があり術者のセンス等が問われる。そして、私は大天使像の視覚化においては大天使の登場シーンこそが山場と考える。

  では、なぜ山場と考えるのだろうか。
  思うに、大天使の召喚は五芒星の刻印と神名と六芒星の視覚化(シ―ル・円の封印)の中間であり、神名振動により発生するエネルギーの場を目に見える形で象徴している解することが出来る。そうすると、大天使像の形成・大天使の登場の視覚化はエネルギーの固定化という重要な意味を持ってくると言える。(注2)
  またこのように考えなくても、大天使の視覚化はいきなり出来あがった映像を視覚化するのでは説得力に欠ける。しっかりとした登場シーンを視覚化してこそより強い臨在感をかんじることが出来ると考え、登場シーンが重要と考えることが出来る。【大天使の登場シーンは「分かりやすい」ものとして一つの山場であることは今も否定しない。しかし、その後の研究でC2パートの重要性を再認識している。】
  以下より具体的なポイントを簡単に叙述する。

  4−2−2 具体的ポイント

   A カバラ十字について

  カバラ十字は別名身体の光輝化とも言う。ポイントは第一に自らの想像の体を出来る限り(それこそ宇宙に飛び出すぐらい)拡大し、垂直方向の光の柱と水平方向の光の流れを呼び寄せ自らの体で交わらせ均衡を保つことである。光が交わるとき深紅の薔薇を咲かせる流派もある。また、想像の体を拡張させるときの両足が地球にしっかりと密着していることをイメージし、上に伸ようとする力と下に引く力を均衡させる。

   B 五芒星の刻印と神名振動(注3)について

  五芒星が輝くところをイメージすることが重要なのは言うまでも無い。また神名を振動させるとき振動が世界を突進し突き抜ける様にイメージするのも同様である。
  さらにポイントとして周行する際、短剣や剣指の切っ先を外側に向け境界として閉じた炎の輪を造る事に意識を向けることが挙げられる。【この円は、円を描いて回った跡と外側に向けられた短剣の切っ先、敷物を用いたときや床に魔法円を記入した場合にはそこに書かれた線で意識化される】

   C 大天使の召喚について

  前述のごとく最も裁量の幅があるところである。小五芒星儀式の大天使は本来の場(ブリアー界)と異なり四大の大天使として働いている。そこで、視覚化のポイントとして配属された元素の属性を持たせることが重要となる。
  基本的な配属については下記の空間の四つの区分の表を参照して欲しい。

空間の四つの区分(注4)
方位西
元素
象徴
季節
時間夜明け
タロットコイン
発音EIOA
原理生命
大天使ラファエルミカエルガブリエルアウリエル
インディゴ
文字ヨドヴァウへーヘー(f)


  この表を基に大天使の服の色、持ち物、雰囲気を造るのである。例えばアウリエルは服の色は緑で盾やコインを持ち物に持ち雰囲気は法、多少厳めしい感じであるといった次第である。
  また、登場の場面も各元素の特性を生かすべきである。即ち、ラファエルは風の心地よい春の野原から飛来し、ミカエルは暑い太陽から、ガブリエルはひんやりとした美しい森の湖畔から白鳥の羽根音とともに、アウリエルは大地を割って登場すると言った次第である。
  さらに大天使の翼も上昇元素である風と火の大天使は△形に広げ、下降元素である水と地の大天使は▽形に広げると言った次第である。
  そして、最後に六芒星を柱の上面と下の面に二枚視覚化する。上は天界の書記メタトロン、下は地球の守護者サンダルフォンを象徴している。
  尚、天使像の中に螺旋を描いてエネルギーが入りこむと視覚化するのも一方である。

【C2パートについては、4−1−2で指摘したように、文献により異同がある。また、ML上で、C.S.さんのご指摘により、我が国の実践者の間で、C2パートでの視覚化の仕方につき、四方に刻んだ五芒星を視覚化するのか、自分の体(五体)の周りに五芒星を視覚化するのか、という点で見解の相違、あるいは混乱があることが分かった。
 五芒星儀式について、(1)四方の五芒星と上下の六芒星で併せて頂点が32即ち32の小径に象徴される全体性(生命の木)を強調する者(A.クロウリーなどはこちらと思われる)には前者が好まれそうである。この場合、文言としてはクロウリーを経由して伝わっているものの方がよいだろう。他方、C2パートで(2)東旗を観じる者には後者が好まれそうである。この場合、文言としては『全書』記載の文言が良いだろう。
 この問題は、どちらかが真伝であり、他方が偽伝である、という関係にはない。ただ、あえて言うならば、(1)の32の頂点を強調する考えはやや技巧派であるかもしれない。C2パートの文言を読めば、単数形である。(2)の視覚化が素直であろう。】

  D 小五芒星儀式のみを行う場合

  拡張した想像の体を元に戻す。

5 儀式の楽しみ方

  今まで、主に退去式を中心に論じてきたが儀式を楽しむという意味では召喚儀式の方が面白みがある。
  なぜなら、退去式は作業場の霊的掃除の意味合いが強くどちらかと言うと受動的な側面が否定できない。他方、召喚式はより積極的な側面があるからである。
  小五芒星儀式の利用法は全書に記載がある朝夕の祈りとして思念体と訓練として防御の儀式として等があるのは周知の事と思う。
  さらに、召喚式を用いて四体またはその内の一体の大天使を視覚化し、四大に対する瞑想が可能である。
  また、方位象徴を召喚式の後に観ずることも出来る。例えば、東は季節は春・夜明けの時期であり人で言えば幼児・子供、南では季節は夏・昼の時期であり人で言えば青年、西は季節は秋・夕方の時期であり人で言えば実り始める壮年のころ、北は季節では冬・夜の時期であり人で言えば知恵の円熟した老年等々と周行に従って自然のサイクルを感じ自然や時の流れとの一体感を感じる事も可能であろう。

【追儺儀式として行う場合、はじめに身に巣くう不浄などを自らの体あるいはオーラから隔離するさまをイメージするが、これについても多くの工夫があるところである。たとえば、入場者のサインであたかも背負い投げのごとく放つ方法、虫や蛇が体から逃げていく様を想像する方法、隔離した状態を保つため沈黙のサインに変ずるときに踏みつけるイメージを加えるなど、実践において多くの工夫のあるところである。そのように考えるとき、受動的なイメージがあるから面白味が少ないとはいえないであろう。】

6 結語

  以上で、小五芒星儀式小考を終える。本小考で小五芒星儀式の実践と応用について必要な基礎的な事項は網羅したのではないかと思う。また、本小考は多くの参考例を示す事を心掛けた。読者諸兄は参考例をもとに自ら小五芒星儀式を応用することが可能であると思う。
  しかし、本小考は筆者の限られた知識と資料のみによっており、数多くの誤りがあると思われる。読者諸兄の見識を請いたい。また、読者諸兄の参考になれば幸いである。


TRK


1 序

  1. 参入儀式は骨格を提供するより、個人の儀式を形成するのに使用する素材を提供する側面が強い。
  2. GDではエノクの大タブレットの配置も五芒星による元素の配置にしたがって配置を変えている。

4 儀式

  1. 「Behold,the four flaming pentagrams And I alone in the midst」「見よ、4つの燃え盛る五芒星と我のみが中心にあり」。IOS掲示板にてFortia女史の指摘を参照した。
  2. 同時に作業全体の監督者、保護者、検閲者として機能も果たす。
  3. 神聖名振動術式は当然に参考にするべきである。
  4. 文字に付いてはI=火=南、H=水=西、V=風=東、H=地=北と配属させるのが、一般的。ここではグレイ(1988, p.44)のThe Seven Divisions of Spaceの表に従った。また、異なる配属としてタイソン(1995)は北を風(V)に東を地(H)に配属する。

        

 ○参考文献表(ネット上の文書は割愛)

秋端勉 実践魔術講座, 碩文社, 1998
大沼忠弘 実践カバラ 自己探求の旅, 人文書院, 1988
大沼忠弘 「実践カバラ入門」, 世界の大秘術・講話所収, 自由国民社, 1984
クロウリー、アレイスター 島田弘之他訳 魔術―理論と実践(下), 国書刊行会, 1991
グレイ、G.ウィリアム 葛原賢二訳 カバラ魔術の実践, 国書刊行会, 1996
コンウェイ、デイヴィット 阿部秀典訳 魔術 実践編, 中央アート出版社, 1998
シューラー、ジェラード 岬健司訳 高等エノク魔術実践教本, 国書刊行会, 1996
バトラー、W.E. 大沼忠弘訳 魔法修行 カバラの秘法伝授, 平河出版社, 1989
フォーチュン、ダイアン 大島有子訳 心霊的自己防衛, 国書刊行会, 1990
藤巻一保 安倍晴明占術大全, 学習研究社, 2000
リガルディ、イスラエル 松田アフラ訳 黄金の暁会 最後の覚書, 魔女の家BOOKS, 神戸, 1992
リガルディー、イスラエル 江口之隆訳 黄金の夜明け魔術全書, 国書刊行会, 1993
ホルスの槍vol.1 No.5, 同号外Vol 3-2, IOS ラー=ホール=クィト テンプル発行, no place, no date
Seeker's of the LightNo-4, IOS URT HEKAU LODGE 発行, 大阪, 1994
Barrnet, F. The MAGUS A Complete System of Occult Philosophy, The Aquarian Press Bath, Avon, Great Britain, 1989
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Regardie, I.  The Golden Dawn 6th ed, Llewellyn Publications, St.Paul, U.S.A., 1989
Tyson, D. Tetragrammaton, Llewellyn Publications, St.paul, U.S.A., 1995

INDEX
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