サモトラケ(Samothrace)島のカベイロス神の密儀


 3=8儀礼においては、サモトラケ島のカベイロス神の密儀(Kabeiria)が題材の一つに使われている。3=8儀礼でカベイロスを使う構想は暗号文書のレベルからあった。

 このカベイロス神の密儀はヘロドトスにも言及される(『歴史』第2巻51節,第3巻37節)。古代地中海において、エレウシスの密儀に次ぐ第二の名声を与えられていた。しかし、この密儀についての資料は少ない。特に邦語資料はM.P.ホールぐらいではないだろうか(ホール以外にエリアーデなど記載の有る良い資料があれば、下記JAGDリンクより私にメールで教えてください。参考ページ: 反・ギリシャ神話「カベイリア(Kabeiria) 」の項)。

 このように資料が少ないためか、GDの儀式でも事実上オフィサー(Kabeiri: Axieros, Axiokersos, Axiokersa)と志願者(Kasmillos)がカベイロス神の秘儀に出てくる人物らに擬され、オフィサーがカルデア神託を利用したカベル(Kabir)の弁舌を説くと言った形式での利用にとどまっている。
 このように、私たちに見ることができるのはM.P.ホール『古代の密儀』の149-52の短い記述ぐらいであるが、この箇所はC.キケロらの『自己参入』にも引用されている。ホールの原書名は_The Secret Teachings of All Ages_。キケロらの引用箇所を見たときこれを買わんといけんのかなと思ったが、『象徴哲学体系』の原書だと途中で気づいた経緯がありました。

 さて、皆さんにはホールを読んでいただくとして、すこしこのトピックスについて連想を働かしてみよう。
 ホールは152でカベイロスの死に触れた後段落を変えて、「死にゆく神の神話の興味深い面は『縛り首になった人』の場合」と続ける。
 縛り首になった人の原文の表現は不明であるがKey12のタイトルがHanged Man。Hangのp,ppがEDで終わるのは絞首刑で殺した場合(それなのにKey12の人物は生きている点に色々解釈が可能な面白みがある)なので、カベイロスの密儀とKey12が結びつき、Key12=Mem=Waterと水の位階3=8と平仄があってよろしいと感心する。
 さらに踏み込んで3=8儀式で取り扱われるkey19太陽、key20審判をもって、復活する神というカベイロスの密儀が暗示されていると読んでも、平仄があい、やはり感心する。「5=6とダブってないかい?」、との突っ込みもあるかもしれないが、いや、ここで暗示・伏線をはって5=6のクライマックスにもって行くんだと反論するところであろうか。
 オカルティストは基本的に黒を白、白を黒と言い放ち、且つ信じることができると言う特性がある。ああいえばなんとやらであろう。

 また、152には「マッケイの『フリーメーソン団百科』を見よ」との指摘があり、暗号文書の著者について一家言ある人はここを持って、だから著者は誰々だ傍証に引けるところかもしれない。この辺りの論議については私は詳しくないので言及は控える。

 最後にPat Zalewskiの_Golden Dawn Rituals and Commentaries_, 309にWestcottによる若干の文書が記載されている。もっとも、ホールの記述の範囲にとどまる。参照できなくても問題はない。


参入儀式の概要とノートの目次
INDEX
作成者: JAGD
©2003 and beyond inserted by FC2 system