Deckの選択
Choose Your Tarot Deck !


 タロー(Tarot)の象徴体系と作業(Work)を本格的に学ぶためには,まず対象であるタロットを入手する必要がある。

 私たちオカルト実践家は,タローに表現される秘教の哲学を作業(Work)を通して学ぶ。作業には,多くの者が「作業」との言葉から想像する瞑想や儀式のほか,文献や図版の研究といった思索的・知的作業も含まれる。もっとも,後者の知的作業もTarotという主題に集中した一連の思考の流れであり,瞑想(meditatio)であるともいえる。
 そして,これらの作業の為には, 作業の基軸となるDeckを一つ確保しておく必要がある。
 現代では、多くのTarotが販売され、黄金の夜明け団の先達たちがよいデッキの入手が困難だと嘆いていたことが嘘のような状況である。多くのデッキは,それぞれ魅力的である。だからといって、毎回違うデッキで作業をしていると,頭と心が混乱してしまうからだ。
 そこで以下,作業の基軸となるデッキを選択する参考資料として,一つを私見を述べたい。MLで常に述べている事ですが,尊重してくれるのは嬉しいが,私見に従う必要はありません

 まず,黄金の夜明け(Golden Dawn)のオリジナルとその周辺の話としては,うじゅぱ老師こと江口之隆氏が情報を与えてくれる。
 江口氏によれば,黄金の夜明け団の団員は,レッドウェイ社が輸入したタロッコ・イタリアーノを使用していた。
 クロウリーは,Oswald Wirth(OW)によるタロット(レヴィの影響を受けたスイスの同名のオカルティストによりマルセイユ版をもとにデザインされたもの)を,1906年ごろ,弟子でありパトロンの一人J.F.C.フラーにプレゼントしており,クロウリー自身も使用していた可能性が高い。
 また,江口氏は,以前黄金の夜明け団の団員はタローに直接簡単な意味などを書きこんでいたとも述べている。実際の研究風景が想像でき,興味深い。

 さて,では現代の我々はどのようなタローを使用するべきだろうか。最終的な判断は当会参加者の皆さんに譲るとして,一般的なコメントを,付しておきたい。

 まず,グループに所属している人は,グループの学習主任などに,自分のグループが使用しているデッキを質問し,なるべくそのデッキを使用するべきであろう。
 デッキにより,少なからず表現される象徴が異なる。グループの講義文書や儀式があるDeckに対応している場合,異なるデッキを使用することは内面において少なからぬストレスを与えることがある。これは,単にメンバーとTarotの話しをした際に,話が合わないことによるストレスは勿論,精神感応的,あるいはグループ・ソウルとの問題も指摘し得る。そのようなリスクは回避した方が良い。

 その上で,よく使用される,あるいは推奨されるデッキの名前を挙げておこう。なぜなら,Tarot,タロットと名が付けば,どれでも良いと言う訳ではないからだ。私たちが学ぼうとしているものは,やや特殊な領域に属している。
 学ぶ領域に相応しい対象,適したタローを選択する必要がある

 以下が,多く推奨されるデッキの例である。

 なお,BOTAとハーメティックは白黒であるが,BOTAは自分で彩色できるように,ニス等による加工がほどされていない。


 複数のデッキを列挙すれば,どれが一番優れているかに関心が起こるのは自然の流れである。しかし,私たちはTarotを通して,自らの内にある叡智を学ぼうとするのであり,どれが良いかは,人の好み(向き・不向き)によることが少なくない。したがって,一概にどれが良いとは言えない。
 だからと言って,何もコメントを残さないのは無責任である。そこで,強いて私個人の事例を挙げれば,キケロのタローが発表される以前に,Golden Dawnの名前に釣られてウォンを購入し,長い事使用していたが,現在は事情によりB.O.T.A.のTarotを作業に使用している。

 他のデッキについては,それほど個々のデッキの深くコミットしていない。そこで,どうしても表面的な感想になるが,参考資料として印象を述べる。

 ヘルメテッィクは,銅版画風だが,やや線がごちゃごちゃしている。また、ニスが塗っており彩色できないので、実用向きではない。
 ウェイトは,クロウリーが彼を面白おかしく茶化していることもあり、日本の魔術関係者では彼を軽視する傾向がかつてあったが,タロット全体ではもっともポピュラーである。しかし,モダンタロットの最初期の作品のため、今日の視点からは、線や色の塗り方などがだらしない印象がある。オリジナルのライダーのデザインは好きだが、線や色が気に食わないという方は、ライダーをリメイクした作品も多いのでそちらを購入するもの良いと思う。解説書は非常に多い。
 トートは節制のカードなどはマサースノートが良く反映しており,好きではあるが,全体的にややイメージが氾濫気味で悪酔いしそうで、一時期あまり好きではなかった。また,クロウリーの象徴体系は,彼自身の性格によるものか,深く学ぶと一貫していると言われるが,少なからず表面は混乱しているとも言われる。したがって,初心者には向かないと思われる。ただし,「クロウリーで行こう!」とする人は,最初からこのデッキを選択しても良いだろう。人気の高いデッキなので解説書も豊富である。
 マルセイユはよいカードである。ウェイトと同じくらいポピュラーである。しかし,現代の研究により密接に関連付けられた生命の木との対応が反映されておらず,現代の秘教の哲学(カバラ)を学び,記憶する道具としての機能が弱い。特に色彩については、マルセイユは、著名なグリモー版以外にも多くの種類がある。近年、古い版の復刻版なども盛んである。
 SOLも大変良いカードである。色彩鮮やか、効果的だがドキツイ。私の美的感覚が保守的なのか,ややあのノリにはついていけないところもある。また、出版元のアクエリアン出版が消滅したことにより2016年現在入手が困難である(なお2016年現在ノーウィッキが自宅倉庫で、裸のカード(本・箱なし)のストックを発見し100ドルで頒布しているようである。)。
 キケロは,絵が美しいかといわれると、返答に困る。また、紙質が、ペラペラである。色彩は鮮やか、SOL同様効果的だがドキツイ。数札において、セフィロトの四界の色彩を反映させているので、セフィロトの色彩を学ぶときに便利である。
 ウォンは,数点の象徴が悪いとの指摘がある。また,絵も凄くは上手くない。
 BOTAは,Waiteを基本にし,PFCの象徴理論に従ってかなり厳しく象徴性を追及している,絵もまあまあ上手が,BOTAのカリキュラムに深くコミットしてるのでBuilder以外には,ちょっと疎外感があるかもしれない。
さまざまなデッキがあるが,全体的に黄金の夜明けの体系で作業する際には,黄金の夜明けの採用したヘブライ文字とカードの対応に即応したもので,かつ,背景が全てのカードで単色でないもの(例えば、通常売られているOW版は,背景は全て金一色である)それも生命の木の小径の色に合致した背景のものが好ましいように思われる。具体的には、ウォン、BOTA、キケロあたりが穏当であろう。


 私の個人的好悪はともかく,どのDeckも定評のあるものである。従って,深くコミットすれば,多くの無窮の叡智をあなたの中から引き出す助けになるだろう。Deckを選択したら,それを愛し,その声を聞いてください。愛は,強い感情によって対象とあなたを結びつける。


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作成者: JAGD
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